【3315】 ○ 開本 浩矢 (編) 『組織行動論 (ベーシック+)』 (2019/03 中央経済社) ★★★★

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初学者向けテキストだが、基本的な知識から最近の動向までよく網羅している。

『組織行動論』.jpg 『組織行動論 (ベーシック+) 』['19年]

 本書は、組織と人の関わりや組織における人間行動の基本知識を体系的に解説したものであり、組織行動論の初学者を念頭に書かれたテキストですが、書かれていることは、日常生活のあらゆる場面で応用可能であると考えられるため、ビジネスパーソンをはじめ一般の読者にも読んでもらいたい本であるとのことです。

 全16章の構成で、第1章で、組織行動論とはどのような領域なのかを概説し、第2~7章で、組織の中での一人ひとりの心の動きや具体的な行動に関するトピックを取り上げています。次に、第8・9章で、チームや集団といった複数の人の存在を前提に解説し、第10~12章では、それよりもさらに大きな組織全体のトピックを扱っています。第13・14章では、組織と個人の接点に焦点を当て、第15・16章で、専門的な人材、女性、高齢者といった、日本企業における新たなプレーヤーに焦点を当てています。

 具体的には、第2章では、モチベーションについて、代表的なモチベーション理論を紹介し、第3章では、組織コミットメントについて、第4章では、組織内での意思決定のありようについて解説しています。このあたりは、組織行動論の基礎的な理解のために必要不可欠な知識であると思います。

 第5章では、職業経験としてのキャリアを組織と個人の双方からとらえ、どのようなキャリア・マネジメントが必要なのかを考察し、企業主導の画一的なキャリアではなく、従業員主導で多様なキャリアの構築が必要になってきていることを指摘しています、第6章では、組織内の職務に関する行動を、OCB(組織市民行動)という考え方をベースに説明し、第7章では、個人が組織内で感じるストレスが、個人の心理・行動に与える影響について解説しています。

 第8章では、チーム・マネジメントについて、チームにはどのようなタイプがあり、チームを成功に導く条件は何かを述べ、第9章では、リーダーとリーダーシップに関する基本的な考え方を説明しています。、

 第10章では、組織において知識・スキルの習得がどのように行われるかを、組織学習という概念を用いて説明し、第11章では、組織変革とは何かを、第12章では、組織文化とはどのようなものかを解説しています。

 第13章では、組織的公正について、従業員のモチベーションや組織の生産性に対して公正の認知が与える影響を考え、その重要性を説明し、第14章では、組織に新しく加入した人の行動を、組織社会化という概念で説明しています。

 第15章では、ダイバーシティ・マネジメントを取り上げ、ダイバーシティが注目される理由や、実際にダイバーシティ・マネジメントを行う際のポイントについて説明しています。第16章では、プロフェッショナルを取り上げ、プロフェッショナルとは何か、それをどうマネジメントするかを解説しています

 執筆陣の多くが若手研究者であることもあって、基本的な知識から最近の動向までよく網羅しているように思いました。こうしたテキストも、時代とともに少しずつ変わっていくのでしょう。また、読者に初学者を想定しているということもありますが、読みながら組織行動に関するイメージが描きやすいように書かれていると思いました。

 人事パーソンに求められる概念化能力とは、こうしたテキストを読んで概念的なものを理解するだけではなく、実際に組織内で起きていることからそのエッセンスを抽出して、統合的な概念としてテキストに照らし合わせ、その照合を通じて、諸事象に対する具体的な見方や行為に還元していくことではないかと考えます。そうした能力を養う上でも、こうしたテキストに触れてみるのは良いことだと思います(勉強会などを開催し、テキストとして用いるようなシチュエーションがベストか)。

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